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【映画レビュー】最初に父が殺された ネタバレ・あらすじ・感想【Netflix】

最初に父が殺された―飢餓と虐殺の恐怖を越えて

最初に父が殺された―飢餓と虐殺の恐怖を越えて

 

 Netflixオリジナル作品、アンジェリーナ・ジョリー監督の最初に父が殺された(原題:First They Killed My Father)を鑑賞しました。

 

 

 以下、ネタバレ有りのあらすじと感想。

あらすじ

  1975年、内戦下にあるカンボジアの首都プノンペン、当時5歳のルオンは親米派政府の役人である父、母、3人の兄、2人の姉、1人の妹と比較的裕福な暮らしをしていた。

 4月、反米はのクメール・ルージュがプノンペンに侵攻し、ルオンたちはプノンペンを追われることになる。役人や軍人を次々と処刑していくクメール・ルージュだが、ルオンの父は自分の身分を偽り難を逃れ、伯父のもとへ身を寄せることになる。
 しかし、伯父の住む村はクメール・ルージュ派であり、村に住むには村長の許可が必要だという。元役人であることがバレるのを恐れたルオンの父は村を出ることを決意する。

 ルオン一家は祖母の村を目指すが、クメール・ルージュの運営する村へ行くことになる。そこで一家は強制労働を強いられる。ルオンは多くの人々が飢餓や病気で死んでいくのを目にする。
 年長の兄メン、コイ、姉のキーヴは若者を集めた違うキャンプに移される。しばらくすると姉のキーヴが食中毒で死んでしまう。

 ある日2人の兵士がルオンの家に来て、父に橋の修理を手伝うように言う。何かを悟った父は家族との別れを惜しみつつ家を出る。父はもう2度と家に戻ってこなかった。

 父が死んだあと、母はルオンと姉のジュー、兄のキムに母と妹を残して別々の方向に逃げるように言う。
 ルオン、ジュー、キムは夜に村を抜け出す。途中の分かれ道でキムと別れて、ルオンとジューは孤児が集まるキャンプに辿りつく。そこでは前の村よりも食糧が豊富で、クメール・ルージュによる孤児への教育も行われていた。ルオンは7歳になっていた。

 しばらく孤児の村で生活したあと、ルオンは少年兵を育成するキャンプに移され、姉のジューとも別れてしまう。
 ルオンは少年兵のキャンプで銃の扱い方や格闘術などの訓練を受ける。また、地雷を埋める作業も行う。

 ある日、外出の許可をもらってルオンが母のいる村へと戻ると、村には人影が少なくなっていた。家に生活用品は残されているが母と妹が見当たらない。ルオンは近所に住む女性から母と妹は兵士に連れていかれたと聞く。母と妹には2度と会えなかった。
 
 ルオンのいる少年兵キャンプがベトナム兵によって襲撃される。ルオンを含めた少年兵たちは逃げ出す。ルオンはジューのいたキャンプへ向かいジューを探すが見つけられなかった。
 混乱のなかで1人になってしまったルオンだが、ジューとキムに再会する。

 3人は難民と化した人々とともにベトナム側の難民キャンプに移動する。3人はそこで同じような境遇の子供たちとともにしばらく生活をする。しかしそのキャンプはクメール・ルージュの軍によって襲撃される。
 銃撃戦が行われているなかをルオンたちは散り散りになって逃げだす。しかし、一緒に生活をしていた子供たちは銃撃や爆撃によって次々に倒れていく。また、ルオンは自分たちが埋めた地雷によって逃げ惑う人々が負傷するのを目の当たりにする。ルオンは泣きながら兄弟たちの名前を呼び、地雷原を歩く。

 ルオンたち3人は違うキャンプに辿りつく。
 ルオンは捕らえられたクメール・ルージュの兵士が囲まれて殴られるのを目にする。また、赤十字のテントで出産が行われるのも目にする。

 ルオンたち3人は離れ離れになっていた上の兄弟2人と再会する。

 大人になった兄弟5人(本人出演)が寺院で祈りを捧げているところで幕を閉じる。

感想

何もわからないままに進むストーリー

 "最初に父が殺された"はカンボジアでの内戦の様子を幼い少女の視点で描いた映画です。そのためか極端に戦局や政治情勢などの描写が少ないです。時代背景も最初に1975年と1回だけ出てくるだけで、今が何年なのか、という情報すら教えてもらえません。(劇中で多分5年くらい経過してる) 映画なので細かく説明しようと思えばできるはずですが、説明を敢えて省いているのがこの映画のポイント。内戦に巻き込まれた少女と同じように、観客も何もわからないままただただ少女の命運を見守ることになります。

 

 ポルポトとかロンノルとかクメールルージュとか、なんとなく知ってるけど詳しくはわからないという人はかなり多いのではないでしょうか。僕もカンボジアについてはほぼ何も知らない状態でこの映画を見ました。(独裁政権が割と最近まであった国くらいの認識)

 そして(おそらくは製作者の意向通りに)わけもわからないまま繰り返されるショッキングな事件とそれに翻弄される少女を眺めていました。と同時に、なぜ僕はいままでこんなことも知らずに生きてきたのだろうと思いました。歴史や政治についてなんの知識もないということがものすごく愚かであることのように感じられました。

 

 あえて何も説明しないことが逆に強い啓蒙になっているのだと思います。

 劇中のルオンは幼くて、何も知らないまま歴史に流されてしまいます。しかし、この映画を見ている観客は安全なところで歴史を調べて、学んで、教訓としてそれを活かしていくことができるのです。

 

 説明が少なすぎて意味がわからないというレビューをいくつか見ましたが、まったくもってナンセンスです。ここで学ばなかったらバカだぜ。

 

ほぼ全編クメール語

 カンボジアが舞台なので当たり前といえば当たり前なんですがほぼ全編現地語であるクメール語で撮影されています。英語は最初にちょっとだけ出てくるだけ。役者もみんな現地の人ですよね多分。

 

 しかし監督はアメリカ人のアンジェリーナ・ジョリー。言語が違っても監督できるということに驚きです。クメール語話者の原作者が脚本とはいえ、なかなかできることではないでしょう。どういう風に撮影がおこなわれたのかとても興味深いです。通訳がいれば普通にできるものなんでしょうか。

 

 と思っていたんですが、ウィキペディアによるとリティ・パニュという同じくクメール・ルージュの時代にカンボジアで過ごし、タイに亡命したという経歴をもつ映画監督と共に制作を行ったようです。彼の協力がかなり大きそうです。

 

その後のルオン

 原作者のルオン・ウンは兄とともにベトナム経由でアメリカに渡り市民権を得て、奨学金で大学に通って人権活動家となったようです。何度もカンボジアを訪れて支援活動をしているのだとか。

 ラストシーンで大人になった兄弟5人が笑顔で登場するのはとても印象的でした。

まとめ

 自伝が原作で実際の体験を基にしているというのが驚きの映画でした。こんなに残酷で不条理な場所を生き抜いてきた人たちは生きているだけで尊敬に値します。

 原作も読んでみたくなる作品でした。映画では心理描写が結構少なかったので、本人はどういう風に考えていたのかをもっと知りたいと思いました。

 

 個人的に今年一番の映画!

 

 ではまた。